左手揮琵琶で立つ。手揮琵琶を落として外円転で誘う。相手は進歩上捶でこちらの顔面を打ってくる。
誘い通りである。手揮琵琶の外円転は、相手の進歩上捶を手揮琵琶の円転の勢で外から内へ、そのまま採勢により相手の右手を押さえながら、右足を前に進め、相手の喉仏下の急所に挒を打つ。進歩採挒である。この場合は俯砍掌を使用して、内腕側で狙う。鎌掌または、腕鎌掌。握拳で鎌拳。より腕の角度を付けて、背点拳、表腕で背臂挒など、体勢に応じて挒を打つ。
相手は、打ち出した右腕に採勢が加わった時、聴勁により同時に紡錘勁が働き、倒攆猴が動き、右足が下がり逃げ、左腕が上がりこちらの右腕を跳ね上げる。相手は倒攆猴を完成させ蓄勁となり、そのまま、玉女穿梭を即座に打ってくる。即座であるので、体勢はそのままである。掌であれば心窩、拳であれば、鳩尾を打つ。心窩には真っ直ぐ、鳩尾には心窩に向かう角度をもって下から打つ。すなわち沈んだ玉女穿梭になる。こちらも、打ち出した挒に、相手の玉女穿梭の提勢が加わった時、聴勁により同時に紡錘勁が働き、倒攆猴が動き、右足が下がり逃げ、左腕で相手の右腕を外から内へ掬い、相手の右腕を托し上げ、倒攆猴を完成させ蓄勁となり、そのまま、玉女穿梭を即座に打っていく。即座であるので、体勢はそのままである。掌であれば心窩、拳であれば、鳩尾を打つ。心窩には真っ直ぐ、鳩尾には心窩に向かう角度をもって下から打つ。すなわち沈んだ玉女穿梭になる。双方同じ技を繰り出す。(この部分を繰り返すのを武当派楊式では拳推手として備えている。多くある拳推手の一つである。倒攆猴と玉女穿梭の拳推手)、もう一度相手が倒攆猴と玉女穿梭で防御と攻撃を行ってくる。この場合は、相手に拳でこちらの鳩尾を狙わせる。心窩あたりを気勢で抑えて、鳩尾をさらして相手を誘う。凌空勁である。
相手の玉女穿梭の鳩尾への発勁を、同じように外から掬う。相手の戻る腕を抱きかかえるようにして、相手の戻る手首に上から俯掌をかける。親指を下にして、その他の指を上にして虎口で相手の母指側の掌根を噛む。戻る手がきれいに引っかかる。相手の戻る勢に吊られながら、右腕の掌は親指を下にして、その他の指を上にして虎口で相手の母指側の掌根を噛む。戻る手がきれいに引っかかる。相手の戻る勢に吊られながら、右腕の掌は堅掌で、親指を下にして、その他の指を上に立て、虎口で相手の母指丘を噛む。他の四指は相手の拳背に貼り付く。堅掌・俯掌は楊式の龍の勢にある掌法である。相手の戻る勢に吊られながら、右腕の掌は相手の右腕の脇の内へ捻り上がっていく。金鶏独立の招式の金鶏纏腕である。金鶏纏腕が決まれば、相手の体は完全に固定され、右胸から右腕がひしぎ、右足が浮き上がる。より独立勢を極めると、そのままでも相手の肩の骨は玉砕する。または、相手の胆経の急所日月を肘底看捶で打つ。急所は開き、経は途切れているので、内部まで浸透し、纏腕を同時に極めると、強烈な鑚勁となる。または、上歩捶掌を右手で相手の右肩へ打ち、同時に右足を後ろに引き、相手の浮き上がった脚に掛けて、相手を仰向けに倒す。その後は固めた腕で、進歩栽捶による裁法を行い相手を地に裁え付けて痛めたり、同じく進歩栽捶で顔面に打ち込んだり、進歩栽掌で、虎口を広げ、全体重を大指根(人差し指の根元の硬い骨)に掛けて、相手の首の気管に乗せて切り潰す。これは鑚勁である。上部の廉泉や、下部の天突などの急所は比較的安全なところで気を失う程度であるが、喉仏の下にある急所(奇穴)の秘中は物理的急所であり危険な箇所である。また、その上の仏骨も物理的急所であり、男性にとっては致命的である。
従って太極拳家は、できるだけ経絡の急所を使用する能力も身につける。経絡の急所は、物理的損傷を与えなくても、効果を発する。活法で蘇生させることができる。
金鶏纏腕ではなく、相手の戻る腕を抱きかかえたとき、上手と下手が逆になった場合は、相手の腕を外転させる。全く金鶏纏腕と逆である。その場合は、右に転身しながら、左肩にその腕を担ぎ、海底針の勢で転身扛臂を行う。扛臂は相手の上腕の急所三焦経の天井、またはその上部の経穴を肩の骨で切り上げる感覚で行う。それに続く招式は多種ある。また解法は、退歩跨虎である。転身扛臂が決まる前に相手の勢を奪う。そのまま、相手の神道に掌根で発勁を打つ。または押し飛ばす。その他多くの招式がある。解法を掛けられた側は、肩を押された勢を聴勁で借勁し、右回り左回りの各種転身勢で、左回りなら左開から如封似閉でそのまま擒拿。進歩上勢を使用して扌率角。または擒拿、背勢に周り左腕で龍扌厥にて相手の左腕を固めるなどの白鶴亮翅の勢で、身後扌厥椀などの連行術がある。