珍しく、いつも太極拳の套路を行う公園には行かず、すぐ近くの小さな公園へ。
小さな公園を覆い被せるように、桜が満開だ。
いつものように、長い套路をゆっくりと始める。
空気が体の内に染み渡っていく。細胞たちが細胞たちと話し始める。桜たちも、空気の粒も全てがつながる。
凌空勁、太極拳の最高の極意である。空間を越えて及ぶ、自然な力のことである。
この套路のひとときが、凌空勁を知るための大切なときである。
だから套路はゆるやかにやる。
いつもは、雨なら雨具を着て公園に出かける。今日は、套路の途中で、ささやかな雨つぶが降りてきた。
それは、まるで自分の体の中を流れる津液のように。
これが凌空の境地である。