太極剣《専門教学》

IMG_3168 30年ほど前、兵庫県の六甲山の山奥で、武道としての太極拳を練り上げるために、さんざん太極剣と太極刀を教わりました。

 鉄製の太極剣と太極刀はとても重く、非力なものは腰腿を使いこなさないと振れるものではありません。
 しかしながら、筋力を鍛えれば、それなりに振ることはできます。多くの中国武術はそのようにして振ります。
 そのように筋力を鍛えなくても、楊式の太極剣は、女性でも非力なものでも腰腿を使うと、重い剣や刀を旋風のように使うことができます。
 楊式の剣と刀はそれを太極の理によって追求しました。用意不用力です。腰腿は意を用います。割り箸一本で身を守れるようにまでなります。
 あるとき、念のため木製の太極剣に重しを付けて弟子達と公園で練習しようとしていたところ、警察に職務質問されたことがあります。
 木製の剣身のところが鞘と思ったのか、それとも私たちの人相が悪かったのか定かでありませんが、集合してこのようなものを持っていると検挙することになると言われました。その後、色々と調べると、日本刀は登録されたものを持つことができるが、中国の刀剣は基本的に磁石につくものはどのようなものであれ、所有することはできないということを知りました。
 東京に出てきてからは、本物の太極剣と同じ重さ程度(1.3-1.5kg程度)の重い木の枝で練習を続けていましたが、人に教えるにはやはり刀剣を手に入れる必要があると思い、当時、週に数回出入りしていた香港で、刃のついていない鉄製の太極剣を見つけ、税管の職員であるという男に相談したところ、刃がついていないから大丈夫と言うことで購入しました。とても安かったので、だめで元々という気持ちで税関に挑戦してみました。
 香港の税関はもちろんすんなり通過しましたが、磁石に反応したので日本の税関で二本とも没収されてしまい、返送処置を行えたので、香港の九龍城の友人の住所に返送したことがあります。その後、香港に行くと、その剣で友人たちに太極剣を教えたりしていましたが、九龍城が解体されてからは連絡が取れません。私の剣と、続けて購入した太極刀は行方不明です。
 その後、日本で太極拳を教えている中で、腰腿を暢やかにしていく域に効果的に連れて行く方法として、太極剣を教えるという気持ちはありましたが、どうも、木製の剣に重しを付けて行う事には、積極的になれませんでした。
 ジュラルミンの軽い表演用の太極剣はそれはそれとして楽しいものでしょう。また、太極拳が熟練して、軽い刀剣でも、八触(詳しくは教本をご覧下さい)の技術を用いて重く感じながら動く方法もあります。しかし、最初は実際の重みを経験し、その重いものがなぜ軽やかに動くのかを経験することが大事です。腰腿が暢やかになり、剣の先まで勢が伝わり、手の重みに匹敵するぐらいの質量が剣先にまで生まれればいいのです。そうすれば、ニュートンの法則の通り、剣先は質量とスピードによって本当に斬れるだけの勁が生まれるのです。軽いものを振っていると、それを知ることが無く、ただ、剣を動かすだけに終わることも多いでしょう。表演は表演であり、太極剣は武道です。軽い棒を持っても、棒で相手の体内を砕くほどの発勁を出せないと意味がありません。その域に達すると、太極拳も大架式(大きな円圏)で武道練習が行えるほどの暢やかさが生まれるようになります。実戦的な暢やかさを練り上げるのであれば、太極剣や、又それ以上に重い太極刀は効果的な課程でしょう。
 日本には表演用の刀剣は多くありますが、なかなか本物の重さを持つ刀剣にめぐりあえず、今日まで至っていました。
しかし、門下達の太極剣を行いたいという進言もあり、少し、ネットを探してみると、中国のサイトに日本向けに送ることができるところを見つけ、色々問い合わせてみると、合金製であり磁石にも付かないので、日本の税関も大丈夫で、保証もあると言うことでしたので、色々と調べてみました。
 中国にも問い合わせてみたところ、中国税関による中国から日本向けの発送検閲や、日本税関の中国からの輸入には、例え磁石が付かなくても、没収される可能性が高いとの情報を得て頓挫していました。いざとなれば、挑戦してみるつもりでしたが、もう少しネットで見ていると、なんと身近なところで、美術剣なるものを見つけ、その剣のみの重量は1.3kgとあり、亜鉛の合金製となっていたので、早速購入してみました。
 私のところに届いたその剣は、剣身はさすがに見た目は合金で鉄とはほど遠いですが、持った感じは全く本物です。そして振ってみると重く、腰腿を暢やかに剣身まで伝えないとなめらかに振れる代物ではありません。探していたものを見つけたので、安心しました。
 いつも利用させていただいている天宝堂さんに感謝です。

 他の合金製は700gの代物でしたが、これは少し軽いので、非力な女性や子供、高齢者にはお勧めです。ある程度の重さを感じます。私たちには軽すぎますが、このような軽いものも、熟練すれば、重みを与え振ることができるようにもなります。
 おおらかに振るので、基本的には戸外で練習を行いますので、剣身には刀剣袋を覆い練習します。剣身むき出しも違法ではありませんが、公園などでは他の人に不安を与えることになりますので、このようにして練習します。
 練習は今のところ、日曜日の武道クラスの後の30分に専門教学として実施します。よろしければみなさんも参加下さい。

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