(←画像をクリックするとLivePhotoが再生します。)
太極剣に巡り合うまでに、私は柳生新陰流を習っていましたが、その時の練習法は、最初から刃引きで勢法(かた)を打つことでした。そして、その重い刃引きがとても軽く打つことができるようになったら、今度は桐の木刀を持たされました。とても軽いものです。そして、それを今度は重く感じるように打てと言われました。いとも簡単に重く打てました。次に割り箸を渡され、それでダイコンを切れと言われて、振り下ろしたところ、すぱっとダイコンが真っ二つになりました。
これは、内勁にて重い刀を振る勢いを本来の潜在能力として取り戻した結果、その内勁で軽い木刀を振ろうが、割り箸を掴もうが同じ勢いが働くと言うことです。このように、柳生新陰流は(かた)の事を勢法と書きます。
そこで、太極剣の師と巡り会い、太極剣を習ったのですが、彼も全く同じことを私に言ったので、既に修得済みであることを伝えました。そこから、剣においては対等にお互いに剣術を教え合いました。王師は柳生新陰流にとても深い興味を覚え、近くに居ながら付き合いのなかった、私の剣の師とも懇意になったようです。
私のところの門下でも、太極剣を特別クラスで行っています。もちろん、重さも刃引きと同じレベルの模造刀です。ジュラルミンのような軽い刀などは使いません。もともと刀は重いものです。ジュラルミンのような軽い刀など存在しません。昔の技術では、強くて薄い剣を作ることなどできず、薄いと言われる日本刀でもあの重さですから、ジュラルミンの剣程度の薄さなど、すぐ折れて使い物にならないからです。
しかし、重い刀を軽く振れるようになると、ジュラルミンの刀でも重く振れるようになります。太極剣の円圏の内勁ができているからです。
剣の円圏は剣尖までです。その円圏を動かすだけの内勁が身につきます。そうすれば、手刀でもその範囲の円圏が保てます。要は、相手との間合いは剣の長さだけあるのです。その範囲に相手が入ってくれば、もうこちらの範疇です。太極拳の大架式は、もともと腕の長さを超えて、剣の長さ以上の円圏を描く套路です。大架式は、その能力を思い出すためのものでもあります。従って、大架式を極めると、太極剣もあたりまえにできる頓法と、大架式をある程度まで高めたら、太極剣を並行して学ぶことで、双方の円圏が合致しながら相乗効果で套路も太極剣も上達する漸法にもなります。このように円圏が広がると、自他和合を、自他不二を攻防の理に持つ太極拳は、相手を包み込むような沾粘連随走化を得ることができます。
Podcast: Play in new window | Download