今から30年以上前の太極拳を教わる場所は、山の中がほとんどでした。イノシシにも出くわし、時には、真夜中近くになるまで深い山奥にいて教わることもありました。
聴勁はお互いの体が触れ合う聴勁はあたりまえで、太極拳には十目(じゅうもく)という周辺環境に対する聴勁があります。
例えば近くに動物が現れると、目で見える何らかの動き、耳に聞こえる音はあたりまえながら、空気の変化を皮膚で感じ、空気の味の変化、そして、動物の心の変化によっておこるエネルギーの動き(気)の気配を感じ、そして、においをも感じるようになります。
この本来の人間の能力は、存思套路にて日常に思い出します。全くの無為自然をしきい値にして動く套路で、違和感を感じ取る能力を思い出すのです。
寒い冬の真夜中の山の中で、冷たい水を持ってお互いにこっそり近づき、頭から水を掛け合う遊びを80才近い老人(私の師)とやっていました。最初の内は、私に水をかけることが多くて笑い転げていましたが、この十目という聴勁が思い出されると微細な変化が耳目鼻口皮膚そして気配でつかみ取れるようになります。このマウスも、男性の特有のにおいに微細な脳内の変化がおこっているのではと言う仮説を立証したものですが、それだけでは無く、動物には太極拳の経験科学で十目の理合となっている聴勁が自然と起こっているのです。
その十目により、深層において心が変化します。そして自然に動き始めます。その心の働きが「意」であり、その「意」により太極拳は発動するのです。用意不用力です。
マウスにケタミンを投与する実験で、投与者が男性の場合にだけ、マウスに抗うつ作用が見られることが報告された。