見ているところに人間は向かっていくという後天的な習性があります。それは目が向くからであり体もそれにつられて動いてしまいます。
自転車などとぶつかりそうになったときも、自転車の方はその人の逃げる動きを追ってますので、その人に向かって行ってしまうのです。
歩行者も逃げようとして、その自転車の動きを見ていますので、自転車に向かって行ってしまいます。
それで相互に正面衝突と言うことになります。車でも、人でも同じです。
そのことがわかってるのと、わかっていないところで大きな違いがあります。
太極拳の眼法では、その自然な性質をはっきりと思い出しておきます。
思い出しておくと、自分の体は目の動きについて動くことを深層で自覚していますから、それをよけるには目の動きと違う方に体が自然に動くのです。それが先天的な危険回避の能力なのです。
具体的に、左手揮琵琶で構えていたら、相手は右拳で顔面を突いてくるとします。
武道の経験が無いと目がその拳を見ていると、その拳の方に体が向くので、自然と目を伏せて手を上げるなどして相手の拳をよけようとしますが、ほとんどは当たります。体はそのままですから、次に蹴りなどがあればそのまま当たります。
太極拳では、左足が体軸で回転して下がって目で見てる拳から我左側が遠ざかったり(走の勢)、左方向に拳を見たら体軸で右に体を回転させ,左肩は右側に移動したり(転動の勢)目で見た方と違う方向に体が動き、そこには手などを残しておきます。(押したり、防御したり、攻防一体の攻撃に使用します。)相手が自転車ならそれを遠ざけたり、車ならその車体と身のクッションになります。
太極拳の練習では眼法をしっかりと練習します。その練習に合わせて、目で見えるものから自然と体が,最短距離で素早く逃げることができる自然な力を思い出します。
自動車などを運転していると、子ども達の集団登校などを見て、それをよけようとすると余計にそこに向かって行ってしまい、悲惨な事故が増えています。普段から、眼法の練習をしていると、体は向かっていこうとする方向と違う方向に動きます。ハンドルもそうです。
居眠りなどからとっさに覚めたとき目の前に子供の列があっても、それをよけることができる。
また車が向かってきたらその動きと違う方に自然と体が動くのです。
眼法とはそのような自然な能力を思い出すものであり、太極拳ではとても大切な修練の一つです。
楊式太極拳の套路は、その眼法をしっかり修練できるように
なっています。
次は動きの始まりについてですが、太極拳は眼法を主にしています。眼法とは目から始まる動きで、いつも、多方向を見ることの出来る目が円方目と言われる眼法です。後は甩手を打つときにまず目の方向を向けます。目の動きはとても大切です。目につられて動くことを太極拳では眼法といいます。眼法の基本は相手を想定して動くことです。ちょっとやってみましょう。相手の突きをよけるときに相手の突きを見ます。その突きをよける手を見ています。★左の上段付きを左によけ、次は右を見てから右を打ち上げる。横も後ろもやってみる。~
周辺視による眼法は脳内視力の訓練でもある。人間の視野は平常心ではとても広くその情報を全てとらえているが、一点だけを見ていると眼球視力だけに頼ってしまうから、その情報の動きをとらえる必要がある。その為ゆっくり動きながら、細かな情報をとらえる訓練をするのですが、おおらかに目を遠くを見るような感じで、視野を広める感覚を訓練します。視野は変わりませんが、脳内視力がはっきりするのです。平常心です。遠くを見る目ですね。後ろもイメージできるようになるのは、相手の動きの続きが情報として見えることになります。