無意識で動く太極拳の真の武術性

太極拳生活を続けていると、布団の中に入るとすぐに深い眠りにつき、そして、深い眠りの中でも異変ですぐに目が覚めます。

深い睡眠でも違和感に対し即座に目が覚めるのは、太極拳の副交感神経を使った練習で、深層意識を使った聴勁(相手や環境の気を感じ取ること)が自然に身につくからです。動物としての本能を思い出すみたいなもので、深いリラックスの中で、気が動く訓練を行います。

このような練習を続けていると、深い眠りの中で、少しの違和感にさっと目が覚める深層的な自信が身につきます。

柳生新陰流の伝書では、半寝で身構える武士は昼間には力が出ないと言われ、熟睡の術を身につけます。安心して熟睡できるこそ、本来の武士であるといわれています。

葉隠れなどに書かれている武士道は死んで生きるという境地です。いつ寝首を切られても当たり前であるという時代ですから、体は寝ていても気は起きていて、気が体を守ることができるように修練する必要がありました。

太極拳の套路でも深層で瞑想のように行う太極拳は、意識や体は寝ていても気は起きているという感覚です。

そこでのリラックスで覚えた套路の型は意識の深いところに刻まれます。それが、緊張と緩和など様々な場面で体が動くときのニュートラルとなり、それ以外の動きは違和感を持つのです。

太極拳では型や套路も頭で考えるのではなく、違和感が無くなるように心身共に調整する練習を行います。

深い眠りと同じような、瞑想のような状態の中で、気を研ぎすまし、外部との接点を融和して自らの一部のように感じ取っていく練習が太極拳の套路です。

深い眠りでも、自分以外のものが自分の体や心の一部なら、そこに異変があったときにはもちろんすぐに目が覚めます。

太極拳で全てのものとの一体感を多く経験することは、道を歩いているときにも、寝ているときにも、自分以外のものの異変にいち早く気づくことにきっと役に立つと思います。

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