太極拳の武道は、アウターマッスルが衰え始めた、老年期から始めると、とても楽に習得できます。アウターマッスルが豊富にある場合、どうしてもその力に主体を置くため、なかなか内勁を主体にする勁が身につきません。
当流でも、特に体の小さな女性や、外筋をあまり鍛えていない人の方が、内勁の主導に早く到達します。しかしながら、正しい修練を行えば、アウターマッスルを主体にしていても、内勁の主導に修正できますが、この場合は「赤子のごとく」と言われるように、今までの力の使い方や、形などを全て忘れなければなりません。後天的なカンフーを捨てて、先天的な無為自然を思い出します。
このように、太極拳は人間としての熟練が高まり、無為自然の境地を思い出そうとしている老齢期に入っていれば、アウターマッスルも衰えることも併せて、内勁主体の運動が主体になってくる時期でもあり、この時期こそ、新たに武道としての太極拳を始める時期とも言えます。
当流でも、今まで70歳以上の門下を数人教えましたが、若い門下と共に武道の練習に励んでいました。
インナーマッスルを使用するので、その柔らかい筋肉を使っても壊れることはありません。むしろ、老齢になればなるほど、バランス筋などの重要性は増してきて、より鍛えやすくなっています。
この記事を見て、8年もかかったのかと思いますが、70歳を過ぎて身につける武道は太極拳が最適であり、死ぬまで修練できるインナーマッスルを修練する柔らかい練習体系をもっています。柔を育てるような練習の中で、同時に屈強な剛が中心に出来上がっていきます。綿拳と言われる楊式太極拳は、綿の中に針を隠すと言われる武道です。
私ももう直ぐ還暦ですが、武道として太極拳を習うなら、今ぐらいからが最も楽しい時期かもしれません。
若者に殴られた老人、太極拳を習得して8年後に“復讐”」
2016年5月13日、中国江蘇網によると、江蘇省南京市でバスに乗っていた時にささいなことから若者に殴られた老人が、8年越しの復讐を果たした。
今年76歳になる徐(シュー)さんは、8年前、バスに乗って老人会に行く途中に、混雑した車内で体が触れたことをきっかけに20代とみられる若者と口論になった。徐さんの身長は160センチそこそこなのに対して、相手は体が大きかった。徐さんは髪の毛をつかまれてバスから放り出されると、その後も若者から暴行を受けた。周囲の人が止めに入ると若者は捨てゼリフを残して去っていったという。
この出来事に怒りを覚えた徐さんは、近くで太極拳を教えていた名のある師匠に弟子入りを請うた。事情を聞いた師匠は「武術を習得するのは復讐のためではない」と拒否したが、徐さんはひざまずいて「私は年を取っても若者に負けたくないと思うだけです」と食い下がった。根負けした師匠は「健康のために行う」「先に手を出さない」などを約束させ、徐さんに身を守る方法を伝授した。それから徐さんは8年間、毎朝3時からの訓練に欠かすことなく参加。恨みは忘れておらず、「もう棺おけに片足を突っ込んでいるが、若造にやられっぱなしではメンツが立たん。恨みを晴らさんと棺おけに入っても目を閉じられん!」と復讐の機会をうかがった。
そしてある日、徐さんは8年前の恨みを晴らす機会がきた。あの若者を見つけるとわざと体をぶつけた。若者のけんかっ早さは健在で、「おっさん、どこに目ぇ付けてんだ!」と言うなり殴りかかってきた。徐さんは習得した太極拳で、相手の力を利用して反撃した。ひるんだ相手に徐さんは「8年前、バスで髪の毛をつかんで殴った老人のことを覚えてるか?それがわしだよ」と言った。若者は思い当たることがあったようにうろたえ、捨てゼリフを吐いてそのまま立ち去ったという。