例えば、この招式、鳳舞毁山。勢法は85式の終盤の転身擺蓮です。
転身擺蓮の套路で行われる行気は緩やかな套路の動きの中で、有益な内分泌を身体の中に沸き上げていきます。
行気での経絡は、まず手少陽三焦で、体のエネルギーの流れに関わる経絡で、身体の各部分を調整し、特に熱や湿気のバランスを整える役割を担っており、套路にて、手少陽三焦を整えることは、身体の中でのエネルギーの循環を促進し、これにより、免疫系が強化され、風邪や感染症から守る役割を果たします。
また、三焦は内臓の調整にも関与し、特に消化器系の働きを助けます。胃腸の調子を整えることで、消化不良や腹痛、便秘などの症状を和らげることができます。
更に、三焦経は体内の水分の運行や分配にも関与しており、むくみや体内の湿気を調整します。これにより、体内の水分が適切に管理され、浮腫(むくみ)や水分の停滞による不調を防ぐことができ、三焦は内分泌系とも関連しており、ホルモンのバランスを整える効果も期待されます。特に、ストレスや疲れによるホルモンの不調を改善する助けになります。
このように、手少陽三焦を整えることで、自律神経のバランスが調整され、精神的なリラックスやストレス軽減の効果も得られます。特に、イライラや不安感、過剰なストレスが解消されやすくなります。
エネルギー(気)の流れがスムーズであることが健康の鍵であり、三焦の調整は、気の巡りを改善し、体全体の活力を高める効果があります。疲れやすい、エネルギー不足を感じる方にも良い影響があります。
次に、転身擺蓮は、脾経の行気となり、脾経は身体の消化や栄養の吸収、エネルギーの生成に重要な役割を果たすため、脾経を整えることで、健康面ではさまざまな効果が期待されます。
脾経は消化器系と密接に関連しており、特に胃腸の働きをサポートします。脾経が整うことで、食欲不振や消化不良、腹部の膨満感(腹痛、ガスなど)を改善する効果があります。
また、脾は気(エネルギー)の源であり、脾経が整うと、体内で気の生成がスムーズに行われ、疲れやすさや倦怠感を軽減します。これにより、日常的に活力が増し、エネルギッシュに過ごせるようになります。
また、体内の免疫系にも大きな影響を与えます。脾経を整えることで、体の免疫機能が向上し、感染症や風邪を予防する手助けになります。
体内の水分を管理する役割も担っているため、脾経が整うことで、体内の水分の巡りが良くなり、むくみ(浮腫)や水分停滞による不調を改善し、脾経の整備は腎経との相互作用で水分の調整をサポートします。
脾は血液の生成にも重要な役割を果たし、脾経が調和すると、血液の質が改善され、貧血や冷え症など、血液不足に関連する症状を予防・改善できます。
脾経は身体的な調整だけでなく、精神面にも影響を与えます。脾経が整うことで、不安や心配、過度な思考から解放され、精神的に落ち着きや安定を得ることができます。特に過度な心配や思考の習慣がある人には心身の放鬆(完全なる安らかな自然状態のようなもの)がもたらされます。
他にも、脾経を整えることで、代謝が改善され、体重管理がしやすくなります。脾は栄養を吸収してエネルギーに変換する働きがあり、代謝が正常に行われることで、体脂肪の蓄積を防ぎ、理想的な体重を維持しやすくなります。
このように、脾経を整えることで、消化機能やエネルギーの生成を助け、免疫力の強化や水分調整、精神的な安定、そして血液生成の改善が期待できます。これにより、消化不良や疲労感、むくみなどの不調が改善され、健康的な体作りに大きな効果があります。
これらの行気を套路で行う事は清浄法と呼ばれますが、二人で行う事を栽接法と言います。栽接法には太極整体などの施術も含みますが、特に武道対錬の招式で行う場合は「雷法」と呼ばれ、実戦的な護身術であるばかりか、この行気が雷のように身体を駆け巡るとされ、これを続けると鬼神になるとして、古代から仙道や武当山での太極拳、黄帝太極拳などで行われてきました。